同じ瞳で。

彼は同じ瞳で何を見たのだろうか。

右目で美しい空想を、
左目で苦しい現実を。


汚いエゴに満ちた世界を
彼の右の目で覗いたら
どんな色が見れるのだろうか。

輝く夢に満ちた世界を
彼の左の目で覗いたら
どんな影が見えるのだろうか。

彼はどちらかの瞳を失うとしたら
どちらを選ぶのだろう。

現実を空想の瞳で見て、
空想を現実の瞳で見る。

なんてひねくれた世界なのだろう
と彼は絶望するのだろう。

そのうち、彼はその瞳で世界を睨むことをやめるだろう。
諦めた瞳には光は映らないからだ。

現実の苦しい世界にも
光があることを知らず、
空想の美しい世界にも
闇があることを知らず、

ただ光を望むことをやめた。


視覚を失った彼を彼は生かしておくのだろうか。

音の世界に生きる彼の世界に光は望めるのだろうか。

世界は簡単には終わってくれない。