爪先の夢

吐き気に負けないように姿を消さないようにしている気がする。現実から逃避していたらログインボーナスは与えてもらえないよう。夢を見ている隙間さえないくらいに辟易している。人の悪いところばかりが目に付く。他人を攻撃していないと自分の醜さと向き合わなくてはならなくなるからだ。汚い瞳。憧ればかりで伸ばそうともしない指先。地を這うのは己の醜さを自覚するためか、それとも尽きる命であることを自覚するためか。微かな笑顔が心を締め付けている。靄がかかっていて指先のその先は見つめることができなかった。どこまでも遠い憧れ。唇についた氷の冷たさとか指先が視覚に与える毒性だとかに振り回されることをどこかでいつも期待している。温かい言葉はなく、それが視界に入ることも許されていないことをどうして忘れてしまっていたのだろうか。礼儀や表面に残った指紋が言葉を壊すように、私は何も知らなかったのだ。何も知らないからといって何もかもが許されているわけでもない。自惚れないようにと頬を叩いたことをいつも忘れてしまう。知らないわけではない。恐らく、記憶していることを拒むのだ。